専門家が一番変化を拒む
私は職業柄、健康に関する本をよく読みます。
その中で見えてくる、医学の世界の利権問題というのがあります。
AとBという選択肢があった場合、患者さんのメリットになるのがBだとしても、専門の学会が認めないなどという事があるのです。
要するに、学会にとってBが広まることは好ましくないという事。
この手の話はいろんな書籍に書かれてありました。
今回ご紹介する書籍もその手のものです。
糖尿病に関する糖質制限と、火傷などに対する湿潤療法です。
この二つの療法は現在、わりと広まってきている治療法ですが、出始めの頃はずいぶんと批判されていたのです。
専門医というのは、○○学会の認定資格を取得した人しか名乗れません。
○○専門医は○○病の治療をする専門です。
嫌な言い方をすれば、〇〇病の患者さんを診ることで利益を得るプロです。
○○病の患者さんが減っていけば、○○病の治療で手に入る利益も減るのです。
学会はその組織のトップですから、利権を守ることにも必死です。
A療法とB療法、Aの方だと10万円稼げる。
Bの方だと3万円稼げる。
という場合、組織としてはAの方を推進したい。
という事が起こってしまっても不思議ではない。
巨大転換(パラダイムシフト)というのは、常識が一転するような現象です。
大昔の天動説、地動説のようなことですね。
今となっては常識のようになっているけど、昔の人にとっては天動説が常識だったのです。
それが覆ったのだからすごいですよね。
こういうのを巨大転換と言えますよね。
糖尿病での食事制限は、カロリー制限でした。
それに対して、血糖値を上げるのは糖質なのだから、血糖値を下げるには、糖質を減らすことだとしたのが糖質制限です。
それまでの常識を否定したのですから、専門家から非難が殺到したのです。
でもシンプルに、そりゃそうだよなと私は納得できます。
結局、専門家ほど、それまでの常識・専門知識が山ほど詰まっているので、頭の切り替えが出来ないのです。
大転換というのは、今まで学んだことが無駄になるのです。
血のにじむような努力をして手に入れた知識、経験を、ぽっと出た人達によって、潰されるのは面白くないですよね。
だから、専門家を支配する専門組織のお偉いさんほど、大転換は許せないのです。
でも、医療は何の為にあるのか。
専門医の為ではなく、その病気やケガで苦しむ人が治癒するためにあるはず。
だから、新しい治療法を発信しているドクターも必死なのです。
糖質制限の第一人者の江部先生は、糖尿病学会の人ではないんですね。
湿潤療法の第一人者の夏井先生は、熱傷学会の人ではないんですね。
つまり、組織の中から新しい方法は生まれにくいのだろうな。
組織のやり方に異を唱えると、組織にはいられなくなるだろうな。
若いお医者さんや、○○学会に所属していないお医者さんたちは、新しい知見を柔軟に取り入れやすいんですよね。
表立って対立構造には入っていけないけれど、糖質制限や湿潤療法を支持しているドクターは増えているようですね。
専門医じゃないと、ちゃんと見てもらえないと思っている人も多いのでしょうけど、専門医では画期的な治療法は期待できないのかもしれませんね。
この書籍でも、少し触れられていますが、糖質制限は、糖尿病に限らず、多くの不定愁訴や難病にもおそらく効果的だと思われます。
ただ、まだまだ未解明な部分も多いし、糖質制限支持者の中でも、考えが割れている部分もあるようです。
こういう、医学の対立構造面白そうだな、と思える人には、ぜひ読んでみてほしいですね。
医療の巨大転換(パラダイム・シフト)を加速する――糖質制限と湿潤療法のインパクト