うらやましい孤独死
タイトルがびっくりしますよね。
医療経済の嘘
という本で知った森田先生の、最新作です。
孤独死と、うらやましい。
あまりにも対照的な言葉ですよね。
孤独死というと、メディアでも取り上げられることがありますが、悲惨な死のイメージですね。
でも、そういう孤独死の本当の問題は、一人で死んでしまう事そのものではなく、
「孤独」
な状態が続いた果ての死であること。
死ではなく、孤独が問題なのです。
健康を損なう、要因は沢山あります。
運動不足とか、飲酒・喫煙とか、肥満とか。
でも、様々な要因のなかでも、もっとも健康を害する要因というのが、孤独です。
科学的にもすでに証明されている話です。
書籍の中では、森田先生の見てきた医療、介護の実態が綴られています。
時には目をそむけたくなるような、悲しい実態も綴られていたりします。
ドラッグロックという言葉も衝撃的に感じる人も多いと思います。
高齢者ビジネスのバカげた実態も、多くの人は知らない。
自分だったらどうすのだろう?
自分の親だったら…。
色んな事を考えながら読みました。
みんな、無駄な延命治療なんて受けたくない。
なのに、どうして無駄な延命治療が行われるのか?
家族や医師、そして本人の様々な立場の視点を感じることが出来ます。
私自身、いろんな経験をして、死生観が培われていますが、森田先生の視点に共感するものだらけなのです。
死の瞬間はたとえ一人だとしても、それまで生きてきた環境が孤独でなければ、孤独死はそんなに悪いものではないなと思えます。
多くの人が、病院で死を迎えるより、家で逝きたいと思っている。
死を見つめることは、すなわちどう生きるかを考えることでもある。
私なんかが、死を語っても誰にも何も響かないかもしれない。
でも、人は誰も死期を知らない。
だから、誰にとっても死というのはいつでも隣合わせ。
人は例外なく死ぬ。
メメント・モリという言葉がある。
言葉の表現は難しいけど、日本語で一番近いのは死生観かもしれない。
必ず死ぬという事を忘れるな。
つまり、死を考えることで、どう生きるかを考えられる。
コロナ禍で、日本は世界と比べて非常に被害が少なかった。
それにも関わらず、世間の動揺がすごかった。
それは日本人の死生観が、とても未熟なことに起因しているのではないかと思った。
まるでコロナが無ければ、人は死なないとでも思っているかのような。
この書籍は、生きることを考える上でも良書になると思う。
私の同世代は、もう少しすると親の介護問題を抱えることでしょう。
私の親世代は、今後どう生きるか、終活という事を考えるきっかけにもなるかもしれない。
もっと若い世代の人達は、このコロナ禍で何かがおかしいと思ったのなら、そのおかしさの理由の一つを考えるきっかけにもなるかもしれない。
良かれと思ってやることが、実は悲しい最期へと追いやっているかもしれない。
医療の問題は、誰一人無関係な人はいない。
早く多くの人が気づいて、多くの人が見つめなおして、より良い死生観を持つことが、良い社会づくりのきっかけにもなると思う。