「健康」から生活をまもる
最近あまり読書の感想を書いていなかったので、久しぶりに読書感想。
この本は私が最近いろいろ勉強させてもらっている、森田洋之先生(医師)の動画にも出てきた大脇幸志郎先生(医師)の書籍です。
健康から生活をまもる
なんだかタイトルから、内容がよく分からない人も多いのではないでしょうか?
悪い生活習慣を是正して、健康をまもるというイメージの方が恐らく一般的なのだと思います。
そして、この本はその逆の本です。
健康第一に生きると、生活が奪われるんですよね。
タバコは吸わないほうがいい、お酒は飲まないほうがいい、体重は落としたほうがいい、添加物の多いものは食べないほうがいい、炭水化物は控えめにしたほうがいい、塩分は控えめにしたほうがいい、運動習慣をもったほうがいい‥など。
あげればきりがないくらい、健康にはこうしたほうがいいというものがある。
整体の仕事は健康をサポートする仕事です。
なので、整体をやっていると健康に関する勉強をたくさんする。
こんな食べ物は控えたほうがいい、人類は元々こんな食生活をしていた。
歪みがどうたら、姿勢がどうたら、背骨のズレがあるのかないのか云々。
一時期は私も、勉強のし過ぎで、食事に敏感になりそうなときがありました。
ベターをどんどん取り入れていくと、これをやってるのに、これをそのままにしているのは良くない。
みたいに、あれもこれも気にし始めると大変なんです。
さしたる健康の悩みもないのに、いつか出るかもしれない病気のために、あれこれ気を使うと生活が奪われるのです。
この本では、コレステロールの神話の話とか、高血圧の話など、医学的に正しいとされているけど、実はそれほど明確な正しさは示されていないという話をしてあります。
コレステロールの高い食べ物を避けたりするけど、実際のコレステロール値は、食物から入ってくるコレステロールより、体内で作られるコレステロールの方が多いのだそう。
だから、食事で減った分のコレステロールは体内で合成されて、結局数値は変わらないという。
医学の世界で勧められる様々な情報を、いろいろと専門知識を用いたうえで、
「…というわけで、別にどっちでもいいんじゃないですか?好きにしたら。」
と許してくれる本です。
この本は、何かの答えを書いてくれている本ではない。
読めば読むほど、結局何を言いたいのだろう?と著者の意図が読めなくなったりもする。
でも最終的なあとがきに書いてあるのだけれど、
「要するに好きに生きればいいんだな」
ということなんだと思います。
好きなものを食べて、好きなことをして、短く生きるのと、
健康にいいものを食べて、健康にいいと言われることをして、長く生きるのならどっちが良い?
ということですらないのです。
好きなことをして、好きなものを食べても長生きをする人もいるし、健康に気をつけて自粛しながら生活をして、病気になる人もいるのです。
確率の問題で、多少可能性が減るかも?というレベルで、健康にいいと言われることを優先するか?
という話なのです。
検診を受けたからと言って長生きできるわけでもない。
病気を診断されたからと言って、治療で治るとも限らない。
健康第一というのは、あまり人を幸せにしないですよね。
占い師に、
「あなたは異性にも友人にも恵まれず、経済的にも恵まれません。でも、健康で長生きできるでしょう。」
と言われたとしたら、それはどうなのでしょう?
私はそれは生き地獄だなぁって思うのです。
家族や友人とコミュニケーションを楽しみながら、ほどほどに生きられたらいいなと。
でも、長生きが何よりの目標の人がいてもいい。
どんな生き方をしたいかも人それぞれ。
この著者の方は、なんでわざわざこんな本を出したのか。
健康第一という、宗教のようなものは、人の生活を奪っていくのです。
健康のためというスローガンで、他人の生活を奪い、自由を奪い、しばりつけていく。
だから、医学の横暴を暴いて戦わないと、自由は得られないというのです。
人には不健康に生きる権利があるのです。
整体も、ちょっと間違うと、人の生活を規制して、こうあるべしと押し付けてしまうことがある。
それも、やってもやらなくても大して変わらないようなことだったりもする。
この本は、手っ取り早く正解を知りたいという人にはあまり向かないと思う。
情報を知って、自分で色々判断したいという人にはとても良書だと思う。
医学的にはこうだけど、現実的にはこうとも読み取れる。
だから、こういう考えがあってもいいんじゃないか。
考えるための栄養になる本です。